【レポート】AWSを使った日テレ系ライブ配信の概要 #CUS-16 #AWSSummit
こんにちは、大前です。
本記事は AWS Summit JAPAN 2021 のセッション「AWSを使った日テレ系ライブ配信の概要 (CUS-16)」に関するレポートです。
AWS Summit Online 2021 - 5/31までオンデマンドで公開中!| AWS
セッション概要
"民放初 TVer上での放送同期配信を実現した日テレ系ライブ配信の概要と、それを実現したフレーム精度の切り替えを実現するCloudPlayoutソリューション"KRONOS"のご紹介" 日本テレビでは日テレ系ライブ配信というサービスを2020年10月から12月にかけて提供しました。これは、地上波放送と同じ時間帯に同じ番組をインターネットで配信するサービスであり、AWS上に構築したプレイアウトシステム(KRONOS)を軸として実現しました。その取り組み及び結果をKRONOS開発を行ったPLAY社とともにご紹介します。
スピーカー
- 日本テレビ放送網株式会社 ICT戦略本部 エンジニアリングディビジョン 担当副部長 松本 学 氏
- 株式会社PLAY 取締役COO 宮島 大輔 氏
セッションリンク(AWS Summit JAPAN 2021 への登録が必要です)
動画は こちら から視聴できます。資料もダウンロード出来ますので是非登録して視聴してみてください。
セッションレポート
本セッションは前半/後半に別れており、前半は 日本テレビ 松本様 より実際に運用したサービス概要やそれに求められた要件、どのような理由で PLAY 社のクラウドプレイアウトシステムの採用に至ったのかについて説明がありました。
(日本テレビ 松本様パート)
- 実現したサービスの概要
- 特徴
- 民放では初となる TVer 上での継続的な放送同期ライブ配信サービス
- 約3ヶ月に渡って合計で 347番組を配信
- HLS による配信
- 放送に対して 40秒程度の遅延で配信
- 達成した成果
- 期間中大きなトラブルなくサービスを完遂
- 配信特有の権利処理などに関するデータや知見の獲得
- 放送と同期しつつ、配信独自の編成等を実現
- 放送と配信を両立してサービス継続できる事を実証
- 特徴
- 放送と配信の特徴の違い
- 放送 ... 高い可用性が要求、規模が大きく成熟している、サービス規格は比較的固定化
- 配信 ... 可用性はビジネス成長とバランスをとって高めていけば良い、規模は小さく黎明期、可変なサービス規格に対応が求められる
- 配信システムに求められた要件
- 短期間で構築
- イニシャルコストの低減
- システムの柔軟性
- 高可用性が実現できるポテンシャル
- 放送側の安定性とセキュリティの担保
- 上記要件をどのように実現したか
- 当初は既存の放送設備を改修して実現する事を検討したが、下記の課題が存在した
- 納期が長くなる
- イニシャルコストの増大
- システムの固定化
- 放送設備への影響が発生する可能性
- 上記より、クラウド上(AWS)にプレイアウトシステムを構築する事を選択
- 当初は既存の放送設備を改修して実現する事を検討したが、下記の課題が存在した
- クラウドプレイアウトの役割
- 放送局で収録された映像やメタデータ等を取得し、リニア配信を行う
- 各エコシステムとの連携も担う
- クラウドプレイアウトに求めた要件
- 配信独自の番組編成(放送とは微妙に異なる映像を配信する)
- フレーム精度の映像切り替え
- SCTE-35 を適切に扱い、アドブレイク情報を連携
- 放送データを最大限活用し、運用負担を最小にする
- 緊急操作機能の実装 → クラウドプレイアウトとして PLAY社 の KRONOS を採用
(PLAY 宮島様パート)
- PLAY社について
- 動画配信専門のテックカンパニー
- メディア様向けに技術を提供
- KRONOS について
- 映像の配信機能等を AWS 上で実現した SaaS サービス
- 配信機能だけでなく、放送関連の機能も実現している
- 放送と連動した配信を実現するために必要な事
- 営放やデータサーバーなどの放送システムとの連携
- フレーム精度での映像切り替え
- クラウドならではの拡張性の実現
- 可用性の確保
- 営放やデータサーバーなどの放送システムとの連携
- 配信側のコンテンツが放送側に追従する部分/しない部分があり、うまく連携を実現させる必要がある
- KRONOS は API ベースで連携可能であるため、特定の局に依存していない
- Lambda や CloudWatch を活用したサーバレス構成で連携部分を提供
- 配信側のコンテンツが放送側に追従する部分/しない部分があり、うまく連携を実現させる必要がある
- フレーム精度での映像切り替え
- 放送に追従する部分とそうでない部分の切り替えをスムーズに実現する必要があった
- ネットワークの遅延等といった様々な条件に対しても問題なく稼働する事を目指した
- 放送では
- 捨てカットと呼ばれる表示しても/されなくても構わないフレームが存在する
- 特定のフレームで切り替えなくても良い(ゆるい)
- 配信では
- 放送側で切り替えが済んだ映像をインプットとして利用するため捨てカットがない
- 出してはいけない映像/音が表示される事を防ぐため、特定のフレームで切り替える事が求められる
- 上記の問題へのアプローチは 2つ
- 映像に埋め込まれている絶対時間(タイムコード)を利用する方法
- 直感的だが、ライブ送出元/先のタイミングのズレや緊急時に差し込まれる映像を考慮すると絶対時間で制御する事が難しい事がわかった → 採用が難しい事がわかった
- SCTE-35 を利用する方法
- SCTE-35 はサーバーサイド広告挿入等で利用されることの多いマーカー
- SCTE-35 に含まれる情報を利用する事で正確なフレーム時間が取得できる
- 放送設備側で SCTE のインサーターを用意する事が一般的
- 映像に埋め込まれている絶対時間(タイムコード)を利用する方法
- クラウドならではの拡張性の実現
- 拡張性や柔軟性を重視した
- 様々な取り組みをしたが、「入出力を増やす」事についてここでは説明
- プレイアウトサーバーは EC2 上で動作しているため、保存容量に限度があった
- ファイルの保存先として S3 を採用
- 柔軟な入力数の調整
- MediaConnect を利用する事で実現
- 可用性の確保
- 放送ほどの可用性は求められなかったが、ある程度高い可用性は求められた
- ここでも MediaConnect が活用できた
- CloudWatch 等とも連携させ、監視の自動化
- 今後の課題
- 放送同等の機能拡充
- 監視の自動化などによるコストの削減
- AWS への期待
- 24/365 配信だと CloudWatch や MediaConnect のコストが高くなってしまう
- MediaConnect の大阪リージョン対応
おわりに
AWS Summit JAPAN 2021 のセッション「AWSを使った日テレ系ライブ配信の概要 (CUS-16)」に関するセッションレポートでした。
放送と配信の特徴を比較しつつ、それらを両立させようとした際に求められる要件等について理解する事ができ、非常に勉強になりました。
また、最近はプレイアウト機能をクラウドにオフロードする事例をよく見かける気がします。ちょうど今日も AWS Media Blog に以下の記事が上げられていました。
MediaConnect の CDI 対応のアップデート もありましたし、今までオンプレ(放送局)で実現していた放送関連の機能も段々とクラウドに移行していくのかもしれません。放送局のクラウド化に今後も注目していきたいと思えるセッションだったかと思います。
以上、AWS 事業本部の大前でした。